
ケイ素-ケイ素結合を主骨格とする高分子の合成
地球の地殻の主要構成元素であるケイ素は、我々のまわりの岩石や土壌に多量に酸化物やケイ酸塩として含まれている。同時に現代の半導体やシリコーン高分子の原料として欠くことのできない我々になじみの深い元素でもある。ケイ素は周期表において炭素のすぐ下に位置しており類似点も相違点もあわせ持つ元素である。前者が自然界でほとんど無機物の形で存在するのに対し、後者は生物界と関連深い有機物の骨格を形作る元素であることは興味深いことである。ケイ素は炭素原子と同じように4個の結合を持ち、飽和な有機化合物と同じ分子骨格を形成することが基本的に可能である。ケイ素?ケイ素単結合を主鎖とする高分子をポリシランと呼ぶ。この主鎖は化学的にあるいは電子的に活性で、光応答性や導電性を示し、炭素?炭素単結合からなるポリエチレンが不活性で絶縁体であるのと対照的である。導電性物質と知られるポリアセチレンでは炭素?炭素二重結合間を電子が動き回ることができるが、ポリシランでは同じようなことがケイ素の主鎖で可能である。様々な分子骨格や置換基を持つポリシランの合成や物性研究を研究テーマとする。
ナノカーボン-ケイ素複合材料への応用
一方、炭素は地球上に普遍的に存在する元素であり人類もこれを様々な形で利用してきた。近年新しい炭素材料としてフラーレン、ナノチューブ、グラフェンなどのナノカーボン類の研究が世界中で進められている。例えば太陽電池や燃料電池などのエネルギー技術、ディスプレイなどのエレクトロニクス分野における新しい材料として盛んに開発が進められている。これらのナノカーボン類を有用な材料へと応用するための手法の1つとして化学結合によるナノカーボン類の化学修飾が挙げられる。様々な有機分子を化学結合させることによりナノカーボン類の特性を引き出し、調節することができるようになる。我々の研究室ではケイ素の持つ特徴に着目し、導電性を有するポリシランによるナノカーボン類の化学修飾反応の研究を進めている。